№63 電子帳簿保存法とは?
「メールで受け取った請求書PDF、印刷して保管していれば大丈夫だと思っていた」——それ、実は法律違反かもしれません。電子帳簿保存法は、国税に関する帳簿・書類の電子データ保存について定めた法律で、2024年1月から一部の対応が完全義務化されています。50本目で紹介したインボイス制度とあわせて、経理業務のデジタル化を進める中小企業にとって避けて通れないテーマです。
3つの保存区分(図解)
電子帳簿保存法は、対応内容によって3つの区分に分かれています。義務化されているのは「電子取引データ保存」のみという点をまず押さえてください。
| 区分 | 内容 | 対応義務 |
|---|---|---|
| 電子取引データ保存 | メール・クラウド等で授受した請求書等をデータのまま保存 | 義務 |
| 電子帳簿等保存 | 会計ソフトで作成した帳簿をデータのまま保存 | 任意 |
| スキャナ保存 | 紙で受け取った書類をスキャンしてデータ保存 | 任意 |
義務化までの経緯(図解)
宥恕措置・猶予措置と、専門用語が続いて分かりにくい制度です。時系列で整理します。
- 〜2023年12月:宥恕措置により、紙印刷での保存も容認されていた
- 2024年1月〜:宥恕措置終了、電子取引データ保存が原則義務化
- 2024年1月〜(併存):「相当の理由」があれば認められる猶予措置も新設(税務署への事前申請は不要)
- 2026年〜:猶予期間の実質的な終了に伴い、税務調査での確認が厳格化する傾向
対象になる「電子取引データ」とは(図解)
紙のやり取りではなく、データでやり取りした場合が対象です。
- メールに添付されたPDF請求書・領収書・契約書・注文書
- ECサイト(Amazon、楽天等)でのWeb明細
- クラウドサービスの利用明細・請求書(PDF形式でダウンロードするもの)
- クレジットカード・交通系ICカードのWeb利用明細(経費計上に使う場合)
「紙に印刷した控えを持つこと自体は問題ありませんが、元の電子データを保存せず紙だけにすることは原則として認められません。」という点が最も誤解されやすいポイントです。
保存要件:「真実性」と「可視性」
- 真実性の確保:タイムスタンプの付与、または訂正・削除の履歴が残るシステムでの保存
- 可視性の確保:「取引年月日」「取引金額」「取引先」で検索できる状態にしておくこと(小規模事業者には検索要件の緩和措置あり)
多くのクラウド会計ソフトには、これらの要件を満たす証憑保存機能が標準搭載されています。手作業でファイル名を工夫して管理するより、対応済みのシステムを使う方が実務的です。
対応しないとどうなるか
- 青色申告の承認取消しリスク
- 税務調査における仕入税額控除の否認リスク
- 重加算税等、通常より重いペナルティが課される可能性
「知らなかった」では済まされない性質の制度であるため、未対応の場合は早急な体制整備が推奨されます。
中小企業がまずやるべき4つの実務対応
- 自社で発生している電子取引(請求書、領収書等のメール・Web受領)を洗い出す
- 電子取引データを保存するフォルダ・システムを決める(クラウド会計ソフトの証憑管理機能の活用が現実的)
- ファイル名を「日付・取引先・金額」等の統一ルールで管理する(検索要件対応)
- 訂正・削除の履歴が残る仕組み、またはタイムスタンプの導入を検討する
申請窓口・参考リンク
よくある質問
Q. 紙の請求書もデータ化しないといけませんか?
A. いいえ。紙で受け取った書類は、そのまま紙で保存を続けても問題ありません。義務化されているのは、あくまで最初から電子データでやり取りした取引の保存方法です。
Q. 個人事業主も対象ですか?
A. はい。事業を行うすべての事業者(法人・個人事業主)が対象です。事業規模による除外はありません。
Q. すでに紙で印刷して保存しています。今から対応しても間に合いますか?
A. 猶予措置が適用される可能性はありますが、税務調査での確認が厳格化する傾向にあるため、早急にデータ保存の体制に切り替えることが推奨されます。
Q. どのツールを使えば要件を満たせますか?
A. インボイス・電子帳簿保存法の両方に対応したクラウド会計ソフトを使うのが最も簡便です。証憑のアップロード・自動仕訳・検索機能がまとめて利用できます。
まとめ
- 電子帳簿保存法のうち「電子取引データ保存」は2024年1月から義務化されている
- メール・クラウドサービス等でデータのままやり取りした書類は、紙に印刷するだけでは保存要件を満たさない
- 保存には「真実性」「可視性」の確保が必要で、対応済みのクラウド会計ソフトの活用が現実的
- 未対応の場合、青色申告承認取消しや仕入税額控除の否認などのリスクがある
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※本記事は2026年8月時点の公開情報をもとに作成しています。制度内容は改正される場合があるため、必ず国税庁の公式サイトで最新情報をご確認ください。



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