№61 職場の熱中症対策義務化とは?
「うちは屋内の仕事だから熱中症対策は関係ない」——そう思っていると罰則の対象になるかもしれません。2025年6月1日、改正労働安全衛生規則が施行され、職場の熱中症対策が「努力義務」から「罰則付きの法的義務」に格上げされました。建設業・製造業だけでなく、倉庫・工場・厨房・屋外での配送業務なども対象になり得る、幅広い業種に関わる改正です。
義務化の背景(図解)
厚生労働省の統計によると、職場での熱中症による死傷者数は年々増加しており、2024年は1,257人と過去最多を更新しています。
死亡・重症化事例の主な原因は「初期症状の放置」「対応の遅れ」だと指摘されており、今回の改正は早期発見・早期対応の体制整備を義務づけることに主眼が置かれています。
義務化される3つの対応(図解)
事業者に義務付けられるのは、大きく3つです。
- 報告体制の整備:熱中症の自覚症状がある作業者を発見した人が、すぐに報告できる連絡先(担当者等)をあらかじめ定め、全作業者に周知する
- 重篤化防止手順の作成:緊急連絡網、緊急搬送先の連絡先・所在地、実施すべき応急処置の内容などを定め、周知する
- 関係者への周知:上記の体制・手順を、実際に現場で働くすべての作業者に周知徹底する
対象になる作業(図解)
すべての作業が対象になるわけではなく、WBGT(暑さ指数)と作業時間による基準が定められています。
- WBGT28度以上、または気温31度以上の場所での作業
- 連続1時間以上、または1日4時間を超えて行う作業
この条件に該当する作業を行わせる場合、業種を問わず対象になります。
罰則の内容
違反した場合、労働安全衛生法違反として6か月以下の懲役または50万円以下の罰金が科される可能性があります。「知らなかった」では済まされないため、自社の作業が対象になるかどうかを早めに確認することが重要です。
エイジフレンドリー補助金(28本目)との連携
28本目で紹介した「エイジフレンドリー補助金」には、熱中症対策コース(移動式スポットクーラー、空調服の導入等)があります。義務化への対応として設備投資を行う場合、この補助金を活用できる可能性があります。ただし固定式エアコンは対象外になるなど細かい制約があるため、28本目の記事もあわせて確認してください。
対策費用の経理処理
熱中症対策にかかった費用(空調服、スポットクーラー等)は、金額に応じて消耗品費・福利厚生費・減価償却資産として処理します。10万円未満であれば消耗品費として一括経費にできる場合が多く、高額な設備は減価償却資産として複数年にわたって費用計上する必要があります。判断に迷う場合は税理士に確認するのが確実です。
企業がやるべきこと(チェックリスト)
- WBGT値を計測する体制(暑さ指数計の設置等)を整える
- 熱中症の自覚症状を報告する窓口・担当者を決め、周知する
- 緊急連絡網・緊急搬送先のリストを作成し、掲示・周知する
- 応急処置の手順(涼しい場所への移動、身体の冷却、水分・塩分補給等)を明文化する
- 定期的な教育・訓練を実施する
申請窓口・参考リンク
よくある質問
Q. オフィスワークだけの会社でも対象になりますか?
A. WBGT28度以上・気温31度以上の環境での作業がなければ、直接の対象にならない可能性が高いですが、空調が効きにくい倉庫・作業スペース等がある場合は該当することがあります。
Q. 小規模な会社でも義務は同じですか?
A. はい。従業員を雇用するすべての事業者が対象で、企業規模による除外はありません。
Q. すでに熱中症対策をしていれば大丈夫ですか?
A. 対策の実施内容だけでなく、「報告体制」「対応手順」を明文化し、全作業者に周知しているかどうかが問われます。感覚的に対応している場合は、書面での整備が必要です。
まとめ
- 2025年6月の法改正で、職場の熱中症対策が罰則付きの法的義務になった
- 義務化されるのは「報告体制の整備」「重篤化防止手順の作成」「関係者への周知」の3つ
- WBGT28度以上・気温31度以上の環境で、一定時間以上の作業を行わせる場合が対象
- エイジフレンドリー補助金(28本目)を活用した設備投資も選択肢の一つ
※本記事は2026年8月時点の公開情報をもとに作成しています。制度の詳細は改正される場合があるため、必ず厚生労働省の公式サイトで最新情報をご確認ください。



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